情報技術に基づく
行動変容デザインやナッジメカニズム
に関する研究者募集
なにをやっているのか?
渋滞情報や雨雲レーダーなどの「情報」に基づいて、行動決定を行うことが当たり前な時代となりました。この背景は、ICT(Information Communication Technology)とAI(Artificial Intelligence)の進化に他なりません。常に持ち歩くスマホやスマートウォッチにはさまざまなセンサが搭載され、そのデータを用いて、人の行動、嗜好、感情を認識しようとする研究が進んでおり、近い未来、人の行動が予測される時代が到来するでしょう。
このような社会におけるウェルビーイング向上に向けては、情報科学だけではなく、心理学、行動経済学、応用行動分析学、認知行動科学、公衆衛生、都市デザインなど、人の行動に関係する様々な学問分野の研究者が集まり、行動変容をデザインする必要があると考え、ICT行動変容研究ユニットを立ち上げました。
ゴミの捨て方を変える、といった小さな行動から、交通やエネルギー、環境といった大きな行動の変化まで、広く取り扱い、できるところからやっていこうと考えています。
なぜやるのか?
行動変容に関する研究において、大切、かつ、問題になってくることは、社会実装・実証です。人の行動は、極めて多様で、コンピュータの中で評価できるものではありません。実環境で、長期間運用し、その中で、さまざまなICT技術や、心理学や行動経済学に基づいたナッジを埋め込み、行動にどのような影響を与えるのか、与えないのかを評価できることが理想的と言えます。
しかしながら、これまでは大学は基礎研究、社会実装や実証は企業や自治体任せという形が一般的であり、技術をどう社会に浸透させていくかという部分は、学問化されていませんでした。技術さえ良ければきっと使われるはずだ!というわけではなく、世の中で使われるようにするプロセス自体も、研究対象として考え、うまくいくメカニズムをデザインし、検証していくことが重要であると考えています。そうした考えのもと、ユニット長である荒川は、2016年に、情報処理学会・関西支部の下に、「行動変容と社会システム研究会」という研究会を立ち上げ、自治体や企業の方も含めた議論を重ねてきました。
伊都キャンパスのポテンシャル
2019年から、九州大学において研究を進める中で、伊都キャンパスのポテンシャルを認識しました。272haという広大な敷地(日本最大)において、これまでも自動運転や車と連携した信号制御といった他ではできない研究が行われています。
- NTTドコモのAI運行バスは、2017年から伊都キャンパスで実験を開始し、2019年には全国に先駆けて商用サービスをスタートしました。
- 電動キックバイクのmobbyは、2019年に伊都キャンパスで実験を行い、その結果に基づいて、2021年5月から福岡市内で正式サービスを開始しています。
伊都キャンパスのポテンシャルは、土地だけではなく、そこに通う1.8万人の学生、を忘れてはいけません。2020年6月には、全国に先駆け、キャンパス最寄り駅、キャンパス内のバス停混雑度情報を提供するサービスitoconを開始し、三密回避のために時差通勤・時差通学という行動変容を促し始めました。2021年4月には、キャンパス内すべてのバス停に加え、主要な食堂に混雑度センサを設置し、日々、学生たちに使われています。行動変容の効果を高めるべく、
- この食堂混雑度情報に加え、ポイントを付与するという、NTTドコモとの共同研究も2020年11月からスタートし、
- 現在1500名の学生モニタを対象とした実験を敢行中です。
- 行動を変えるために、プッシュ通知の文言や送信タイミングなどからデザインし、効果測定を行っています。
- 今後は、ゲーミフィケーションに関する実験もスタートします。
- 実験のサポートは、学内の学生組織iQ labがチライデザインから被験者集め、アプリ開発&運営までを一手に引き受けてくれています。
糸島のポテンシャル
九州大学・伊都キャンパスは、福岡市西区と糸島市にまたがっています。自然豊かな(悪く言えば田舎)な糸島は、この20年で大きく変化し、移住者も増え、世界的にも注目されるエリアへと発展しています。
九州大学は、糸島市や地元の事業者(例えば、交通事業者である昭和バス)など様々な連携を行ってきています。伊都キャンパスで1.8万人の実験でうまくいったことを、次は10万人の糸島市へ適用し、さらには、他の市町村へ展開していくといった長期的なシナリオを描いています。
伊都キャンパス・糸島から、
人の行動を変えていく技術のイノベーションを生み出しませんか?
こんなことを一緒に研究できる人を探しています
- 職種:准教授(テニュアトラック)
- 基本任期は採用日から5年であり、3年目に中間評価、5年目にテニュア資格審査を受けて、研究業績等が優秀であると認められれば、本学のテニュア(任期を定めない定年制の身分)が付与される。
- 所属:大学院システム情報科学研究科・情報知能工学部門・高度ソフトウェア工学講座
- ヒューマノフィリックシステム研究室(荒川研究室)の一員として活動
- 職務: ウェルビーイングを目的として、人の行動変容を促すナッジメカニズムデザイン・行動モデリングの理論的研究、および前述した理論に基づくキャンパスでのエビデンス実証に関する研究
- 医学、心理学、社会科学、認知行動科学、行動経済学、応用行動分析学、公衆衛生学、都市工学など、情報科学以外の専門性を有する方を歓迎します。
- 詳細
- 申込期限:2022年1月7日(金) 必着(メール応募)