itocon(いとこん)って、何ですか?
大学で社会実験してる感じなんですね!
九大生がよく利用するバス停や食度の混雑度(どれだけ混雑しているのか)をリアルタイムで可視化するアプリです。バス停の混雑度は過去にさかのぼって確認することもでき、また、九大学研都市駅のバス停では一日の混雑度予測も表示しています。


itoconは、情報技術によって人の行動を変えていくという研究の一環で開発されています。混雑度情報をどのような形で、どのようなタイミングで、見せると実際に行動が変わるのか?ということが研究課題です。NTTドコモとも協力して、可視化だけではなく、ポイントを付与すると、どのように行動に影響が出てくるのかということも検証しています。こうした情報科学と心理学を融合した最先端の研究も九州大学では学ぶことができます。実は、この実験には九大生が1000名以上参加しており、実証実験キャンパスである伊都キャンパスならではの研究といえます。
どうやって混雑度を計測しているのですか?
センサって高いんですか?
バス停や食堂に混雑度を測定する専用のセンサを設置しています。九大学研都市駅(九州大学の最寄り駅)のバス停では、カメラセンサで並んでいる人の数をカウントしています。九州大学内にあるバス停や食堂では、本研究室で独自に開発したセンサを用いて混雑度を取得しています。このセンサではWiFiとBLE(Bluetooth Low Energy)を用いてスマートフォンの台数を測定して混雑度を測定しています。


センサは、Raspberry Pi 3という安価なマイコンボードに、センサボードや電源管理ボード、LTE通信モジュールなどを追加したもので、1台あたりのコストは3万円くらいです。
電源が取れないバス停には、太陽電池で充電して、明るい時間だけ稼働する混雑度センサも設置されています。
カメラ映像から人数を数えるのは簡単なんですか?
画像認識に関しては、技術の進展が凄まじく、様々なものを自動認識できるようになっています。大量の画像を用意すると、人工知能が自動的に学習を進めていきます。Google Photoが無料なのは、その学習の材料にするためです。結果として、人物、ペットや、車の車種まで識別できるようになっています。このような人工知能に関する研究も、九州大学工学部電気情報工学科(I群)で行われています。
BLEってなんですか?
COCOAさえ入っていれば、混雑度センサのためにアプリを入れたりする必要は無いってことですね!凄い。
BLEとはBluetooth Low Energyの略で、ヘッドホンやイヤホンでおなじみのBluetoothの規格の一つです。BLEはヘッドホンやイヤホンのBluetoothよりも省電力で利用でき、接触確認アプリの「COCOA」でも利用されています。COCOAアプリは、定期的にBLE信号を発信するとともに、飛んできたBLE信号を記録しています。BLEは10-30m程度しか電波が飛ばないため、この信号の送受信状況から、同じ空間にいた人、つまり濃厚接触者を判定しています。
本研究室独自で開発した混雑センサでは、このCOCOAが発信しているBLE信号を横から観測し、カウントすることで周辺のスマホデバイスの数を測定し、間接的に混雑度を計測しています。しかし、COCOAの総ダウンロード数は今年6月30日時点で約2800万件(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html )とまだまだ少ないので正確に人数を測定できないなどの課題もあります。
プライバシーとかってどうなってるんですか?
安心ですね!
BLEによるセンシングではCOCOAが発信する信号を用いています。COCOAが発信する信号は個人が特定できないように工夫されており、その信号を利用しているのでitoconのセンサーも個人を特定することは不可能となっています。同様にWiFiによるセンシングにおいても、iOSやAndoroidなどのOS単位でWiFiの信号で個人が特定できないように工夫されています。
なぜitoconを作ろうと思ったのですか?
大学の食堂って昼休みだけ激混みになりそうですもんね・・・
新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で、感染リスクを減らすために三密を回避する行動が重要であることが指摘されています。九州大学では通勤通学時間帯のバスや、昼時の食堂が非常に混雑するため、対面授業再開時に感染リスクが高くなってしまうのではないかという懸念がありました。そこで、九大生がよく利用するバス停や構内の食堂の混雑度を可視化するアプリを作成し、自主的な混雑回避の行動を促すために「混雑度可視化アプリ | itocon」を作成しました。
九州大学では withコロナの時代において学生が安心・安全に学ぶことができるように様々な取り組みを行っております(https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/crisismanagement/riskmanagement/coronavirus/with-and-beyond/ )。
ところで、itoconのセンサってどこに付いてるんですか?
結構、キャンパス全体に取り付けられてるんですね!
九州大学構内のバス停及び食堂に設置されています。

itoconって誰が開発してるんですか?費用とかもらえるんでしょうか?それともボランティア?
大学内で開発経験が積めるのはいいかも。。
itoconは、主に荒川研究室の学生が中心になって、新機能の開発や運用を行っています。去年5月の初リリースから数々のアップデートを行い、より使いやすいアプリを目指して日々開発を続けています。今年の7月には大型のアップデートとして、食堂の混雑度を投稿してフィードバックできる機能がリリースされました。
開発はボランティアではなく、研究室からバイト代が出てます。大学内で開発バイトしている感じです。今は、3年生〜修士2年生10名くらいで開発中です。
研究の一環として学生がチームを組んでアプリを開発し、(バイト代ももらえて)、リリースすることができるというのもヒューマノフィリックシステム研究室の特徴の一つです。
itoconみたいなものを開発するには、どんなことを勉強すればいいんですか?
結構、たくさんの技術を学ばないといけないんですね(汗)
アプリのインターフェース(ユーザが触れる部分)は、LINEやZOZOTAWNの一部でも使用されているVue.jsという最新技術を使って、混雑度が見やすく、操作もしやすいように工夫して作られています。
混雑度センサは、Pythonで書かれています。itoconは、クラウドシステムも必要となりますが、Pythonやデータベースを組合せて書いてあります。
他にも複数人で開発するためにGithubやSlackなどを活用してます。
この辺は、大学の講義では学べないので、こういう開発プロジェクトに飛び込んで学ぶしかないです。チームで取り組むことも大切です。
今後、itoconは、どう発展していくんですか??
お気に入りのバス停、食堂を登録して一番最初に表示されるようにできる「お気に入り機能」やバス停・食堂以外の場所の混雑度表示の対応など、様々な機能追加を予定して、使いやすくしていきます。
itoconは、NTTドコモとの大規模な実証実験でも使われていて、今後は企業のサービスとして世に出ていく可能性もあります。
NTT Docomoとのdポイントを使った行動変容の実証実験